メニュー

肝臓がん

どんな病気?

  • 肝臓は右上腹部にあります。
  • 肝臓がんの死亡者数は、2000年代なかごろに約34000人とピークを迎えました。その後は診断・治療・予防法の進歩もあり徐々に減少、現在は25000人程度で推移しています。
  • 2020年にがんで亡くなった方のうち、5番目に多かったのが肝臓がんでした。
  • 年代別にみると、男女とも80歳以上が最も多くなっています
  • 肝臓がんは同時に複数個発生したり、一度治療しても別の場所に再発しやすい特徴があります。

原因は?

脂肪肝

1990年代前半まで、肝臓がんの原因と言えばC型肝炎やB型肝炎でした(90%前後)。
現代においてもまだまだウイルス性肝炎の占める割合は多いですが、ウイルス以外の割合は年々増え続け2015年の統計では30%を超えるに至りました
その大部分が非アルコール性脂肪肝アルコール性肝障害です。
この割合は今後も増え続けることが予想されており、対策が急務となっています。

C型肝炎

1990年代前半まではC型肝炎が圧倒的に多く、肝臓がんの原因の約70%を占めていました。
その後は抗ウイルス薬の開発など多大なる医療の進歩があり約50%まで低下しています。
今後も低下していくことが予想されます。

B型肝炎

B型肝炎による肝臓がんの死亡割合は1980年代から2010年代に至るまで10%強で推移し、ほぼ一定です。
抗ウイルス薬は開発されておりますが、C型肝炎のように発がんを抑えるまでには至っていないのが現状です
一方で、B型肝炎の主な感染経路であった母子感染については国が1986年に対策事業を開始しました
この事業開始後に生まれた世代の肝臓がん死亡者数は低下することが予想されています。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は肝硬変の原因の約3%です。
割合としては低いですが肝硬変まで至ってしまうと、いずれの肝炎も同じように肝臓がんのリスクが高くなります。

その他

原発性胆汁性胆管炎を始め、まれな肝疾患が原因となることもあります。

症状は?

  • 無症状
  • 肝硬変に伴う症状
  • 門脈塞栓
  • 破裂

無症状、または肝硬変に伴う症状

肝臓がん自体は初期の段階では無症状です
ただ、背景に肝硬変があることが多く、肝硬変による黄だんや腹水、むくみなどの症状を抱えていることがあります。
肝硬変についてはこちらのページへ

血管塞栓

肝臓がんが進行すると「門脈」、「肝静脈」といった肝臓内の重要な血管に入り込むことがあります。
すると血流が障害され正常な肝機能が保てなくなります。
また後述する治療の選択の幅が狭まるなどの様々な問題が生じます。

破裂

肝臓がんは大きくなると破裂し、激しい腹痛と出血を起こす事があります。
多くの場合では緊急治療(カテーテル、手術など)が必要になります。

どんな検査があるの?

血液検査

肝臓がんの腫瘍マーカー(がん細胞が分泌する物質)として「AFP(エーエフピー)」「AFP-L3」や「PIVKA(ピブカ)」がよく測定されます
これらがどれか一つでも上昇している場合、がんを疑って画像検査へ進みます。

腹部超音波検査(エコー)

エコー検査は最も簡便で、放射線検査のようにお身体への影響を心配する必要もなく、外来で簡単に行うことのできる非常に有用な検査です
近年では造影剤を注射すること(造影超音波検査)でより肝臓がんが診断しやすくなりました。
一方で弱点は、高度の肥満患者さんや腸のガスが多い方、食後などでは超音波ビームが届きにくく内臓を描出しにくくなる点です。

造影CT検査

エコー検査よりも、より分かりやすい(診断に適した)客観的な画像として肝腫瘍を調べることが可能です。
他の臓器に転移していないか同時にチェックすることも可能ですので、進行度(ステージ)を診断するためにも必要な情報になります
造影CT検査は非常に有用な検査ですので、肝臓がんが疑われた場合は必ずと言っていいほど撮影されます。
一方で造影CTの弱点はどうしても放射線被ばくがあること、一定以上に腎機能が悪い方は禁忌である点です。

造影MRI検査

造影MRI検査が最も初期に肝臓がんを発見できると言われています。
そのため、腹部エコーや造影CTでは決め手に欠けるような場合に造影MRIを行うことで、見逃しを防ぎやすくなります。
欠点は狭い空間に30分ほど横になりその間じっとしている必要があることから、閉所恐怖症の方や認知症などの方は難しい点、造影CTと同様、一定以上に腎機能が悪い方は禁忌である点です。

肝腫瘍生検

肝腫瘍の多くは上記のような各種画像検査で確定診断を行います。
ただ、一定の割合で画像検査のみでは判断に迷う場合が出てきます
そういった場合に行われるのが肝腫瘍生検です
超音波検査で腫瘍を描出しながら安全なルートをリアルタイムで確認し、腫瘍まで針を刺して組織を採取します。
胃や大腸のポリープに対して行われる生検は内視鏡で直接見ながら行えます。
一方で、肝腫瘍生検はあくまでも超音波検査で間接的に見ながら行う検査です。
ある程度合併症リスクもありますので気軽には行えないという欠点があります。

治療は?

  • 肝切除(外科手術)
  • ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法
  • カテーテル治療
  • 薬物療法(抗がん剤)
  • 肝移植
  • 放射線療法

肝切除(外科手術)

従来から行われてきた治療法です
治療効果は高いものの、どうしても正常な肝臓も含めて切除する必要があるため残った肝臓に負荷がかかり、術後に肝不全を併発することがあります。
また肝臓がんは別の場所に再発しやすい特徴を持ち、実際に術後3年での再発率は70%以上です。
そのため肝臓がんはある程度再発を前提とした治療計画を立てる必要があります。

とはいえ、根治のためには手術が最も適切とされる状況が存在します。
腫瘍のサイズが3cm以上であるとか、肝臓内の血管にまで腫瘍が進展している場合などです。
下記のような治療法も含め、個々の患者さんに応じて適切な治療法を慎重に選択することが求められます。

ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法

先端に電極を内蔵した特殊な針を超音波ガイド下に皮膚の上から腫瘍に刺し込み、熱で腫瘍だけを焼くことの出来る治療法です。
「ラジオ波」や「マイクロ波」で発生する熱を利用します。
正常な肝臓はほとんどダメージを受けないため、外科手術のように治療後に肝不全を併発するリスクが低いこと、再発してもその都度繰り返し治療しやすいことなどの長所があります
腫瘍が3cm以内かつ3個以内では外科手術と治療効果がほとんど変わりません。
一方で大きな腫瘍や、個数が多い場合、血管にまで進展している場合では不適切とされています。

カテーテル治療

足の付け根の動脈から肝臓の動脈(肝動脈)までカテーテルを挿入し、腫瘍を流れる(栄養する)動脈を閉塞させる治療です
言わば兵糧攻めです。同時に抗がん剤も注入することで治療効果を高めます。
これは腫瘍が大きい、個数が多いなどの場合に選択される治療です。
がんを根治することはあまり期待できず、外科手術やラジオ波治療と比較すると治療成績は悪くなります。

薬物療法(抗がん剤)

他の臓器への転移があると上記3つの治療法は原則的に適応がありません
つまり上記3つの治療法はどれも肝臓だけに対する治療です。
それでは転移したがんに対しては治療していないことになります。

そこで全身に効果のある薬物療法が必要になるのです。
これもいわゆる根治治療とはなりませんが、近年は選択できる薬剤が増えてきています。
それに伴って治療効果もひと昔前よりも向上しており、今後も進歩が期待されている分野です
またカテーテル治療と組み合わせることによる、さらに良好な治療効果が多数報告されています。

肝移植

肝移植は言わば最終手段です。
ベースにある肝硬変ごと肝臓を入れ替えることのできる治療であり、肝がんの再発率も低いなど好ましい点がいくつもあります。
とは言え、条件があります。

従来は高度の肝障害があり「肝臓がんの個数が3個以内かつ最大3cm以内、もしくは1個で5cm以内」が条件でした。
2020年からは条件が緩和され「腫瘍の大きさが5cm以内かつ個数が5個以内かつAFP(腫瘍マーカー)500ng/mL以内」となりました。
ちなみに日本では主に生体肝移植が行われています。
ドナーは患者さん自身の親族もしくは配偶者の親族であることなどの条件があります。
脳死肝移植も2010年の臓器移植法改正(家族の同意で臓器提供が可能になった)以降は増加傾向にあります。

放射線療法

様々な理由で上に挙げたような各種治療が受けられない場合に行うことがあります。
用いられる放射線の種類はX線、陽子線、重粒子線があります(陽子線、重粒子線は2022年4月から保険適用となりました)。
一番効果が高いと言われている重粒子線治療では局所制御率(がんが画像検査上、消失した状態。もしくは大きくならないで維持している状態)は1年で98%、3年で91%、5年で91%と報告されています。

当院では特にリスクの高いC型肝炎B型肝炎、一部の脂肪肝(NASH)からの発がんを早期発見することに努めております。
気になることがございましたら一度当院へご相談ください。

参考

肝がん白書 令和4年度
肝癌診療ガイドライン 2021年版

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME