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胆のうがん

どんな病気?

  • 肝臓で生成された胆汁(たんじゅう)は胆管を通って十二指腸に流れます。つまり胆管は肝臓のなかから始まって、十二指腸までつながっています。胆管の脇に繋がるひょうたんのような形状をした臓器が胆のうです
  • この胆のうに発生するがんを「胆のうがん」と呼びます。
  • 胆管と胆のうを合わせて「胆道」と呼びますが、胆道がんと診断された方は全国に20221人(2018年)、命を落とされた方は17773人(2020年)おりました。他の臓器と比較すると決して多いがんではありませんが、年々増加傾向にあります
  • 50歳を超えたころから増え始め、ピークは90歳以上にあります。

原因は?

肥満

これまでの研究で体脂肪の増加は胆のうがんの危険因子と報告されています
肥満は直接的な原因となるだけではなく、肥満に合併しやすい胆のう結石を介して間接的にも胆のうがん発生に影響を及ぼすと推測されています。

膵・胆管合流異常

通常、胆管と膵管は「十二指腸乳頭部」と呼ばれる出口で合流することで(胆汁と膵液が)互いに混ざらないように身体の仕組みが出来ています。
この合流がもっと上流になった状態が「膵・胆管合流異常」です
生まれつき(先天性)の異常になります。
この状態では膵液が胆管に逆流し、さらには胆のうにまで刺激を及ぼし高率に胆のうがんを発症させてしまいます
過去の大規模な統計調査によると胆のうがん合併率は約60~90%と驚異的に高い割合となっています(そのために膵・胆管合流異常がある場合は予防的な胆のう摘出術が推奨されています)。

胆のう結石

胆のう結石のサイズが3cm以上、有症状、胆石保有期間が長いことなどが胆のうがん発症の危険因子とされています。
胆石に伴う慢性的な炎症が発がんに関与していると推測されます
ただし、無症状の方では発がん率が極めて低いことも判っており、実は本当に胆石が発がんに関与しているかの証拠は乏しいところです

胆のうポリープ

胆のうポリープのページでも解説したように、そのほとんどは良性のコレステロールポリープです。
これはがん化することはありません
問題となるのは腫瘍性ポリープです
ただし両者を見分けることは容易ではなく主にサイズなどを参考として判断しまします。
ある報告ではポリープサイズ別の胆のうがんの頻度は5mm以下で4.6%、6~10mmで9.3%、11~15mmだと急に割合が増加し24.1%、16~20mmに至っては62.1%と、その半数以上が胆のうがんであったことが示されています。

胆のう腺筋腫症

胆のう腺筋腫症でくびれた胆のうの底に胆汁がうっ滞し、慢性的な炎症から発がんすることがあるとも言われていますが、現時点では証拠不十分です。

感染症

サルモネラ菌感染による慢性的な炎症が発がんと関連しているとも言われています。

症状は?

腹痛

統計上、初発症状の50~80%が腹痛です
胆のうは右上腹部(肋骨の奥)にありますので、そのあたりが痛むことが多くなります。

黄だん

胆のうがんでも黄だんが出現することがあります
つまり白目や皮膚が黄色くなります。
初発症状としての割合は10~44%と報告されています。
黄だんは胆管が閉塞し、行き場を失った胆汁成分(ビリルビン)が皮膚に沈着することで起こります。

上で解説したように胆のうは胆管の脇にぶら下がっている臓器であるため、直接的に胆管を閉塞させることはないはずですが、胆のうがんが進行すると胆管まで侵され閉塞することがあります。

吐き気、体重減少

他の臓器のがんにも共通しますが吐き気、体重減少も非常に起こりやすい症状です
初発症状の15~68%に吐き気・嘔吐、10~72%に体重減少があったと報告されています。

急性胆管炎

胆のうがん進行により胆管が閉塞すると、急性胆管炎を発症することもあります
急性胆管炎では上に挙げたような、黄だん、腹痛に加えて発熱も出現します。
詳しくはこちらのページに解説しております。

どんな検査があるの?

血液検査

胆のうがんは初期の段階では血液検査異常が出にくい疾患です。
進行して胆管閉塞まで起こすとASTALTALPγ-GTPなどの肝・胆道系酵素、黄だんの数値(ビリルビン)などが上昇します。
また腫瘍マーカー(がん細胞が分泌する物質)としてCEACA19-9が上昇することがあります。

腹部超音波検査(エコー)

エコー検査は最も簡便で、放射線検査のようにお身体への影響を心配する必要もなく、外来でサッと行うことのできる非常に有用な検査です。
特に胆のう腫瘍を診断する能力は極めて高く、エコー検査のみで90%もの割合で正確な診断が可能であったことも報告されています
一方で弱点は、高度の肥満患者さんや腸のガスが多い方、食後などでは超音波ビームが届きにくく内臓を描出しにくくなる点です。

CT検査

エコー検査では判別しにくい、がんの進行度を診断するために強く推奨される検査です
つまり隣接する肝臓・重要な血管などに浸潤していないか、他の臓器に転移していないか、などを診断するために実施される検査です。
進行度を診断しなければ治療方針も決めることが出来ませんので、胆のうがんが疑われた場合は必ずと言っていいほど撮影する必要があります。
一方でCTの弱点はどうしても一定量の放射線被ばくがあることです。

MRI検査

MRIの優れている点は胆道だけ切り取って立体的に映し出すことが出来る事です
CT検査は上で述べたように他の臓器も同時に確認するのに有用ですが、MRIではあえて肝内胆管~総胆管、その脇道に繋がっている胆のうのみを映し出すことで胆道全体の姿を確認し易くしています。
これによってがんが進行して胆管にまで達していないか診断するのに役立つのです(胆管にまで達していると治療方針が変わってきます)。
欠点は狭い空間に30分ほど横になりその間じっとしている必要があることから、閉所恐怖症の方や認知症などの方は難しい点です。

超音波内視鏡検査

腹部エコー検査の弱点である肥満やガスの多い状況を克服したのが超音波内視鏡検査です
胃や十二指腸から直接胆道を観察することが可能であるため脂肪やガスの影響を取り除き、かつ近くから見ることができます。
口から挿入する内視鏡(通常の胃カメラよりも太い)ですので検査の負担が比較的大きいことが難点です。

その他

ERCP(内視鏡による直接的な胆道造影)、胆道鏡(胆管内に直接挿入する特殊な細い内視鏡)などもありますが、本解説では割愛します。

治療は?

  • 胆道ドレナージ
  • 外科治療
  • 化学療法
  • 放射線治療

胆道ドレナージ

胆のうがん進行により胆管閉塞による黄だん(閉塞性黄だん)を合併することがあります。
この場合には胆道ドレナージを考慮します。急性胆管炎を併発しているような場合には必須になります。
「ドレナージ」とは溜まっているものを排液することを指します。
つまり胆道ドレナージとは「うっ滞した胆汁を逃がすための管を胆管に留置すること」を言います

主に内視鏡を用いて行われます。プラスチック製ステント(頑丈なストローのようなチューブ)や金属製ステント(網目構造をした筒状の金属)などを胆管に留置します。

外科治療

胆のうがんを根治できる可能性のある唯一の治療は外科手術です
術式は「開腹胆のう摘出術」が推奨されています。つまり腹腔鏡手術は再発リスクが高くなるため推奨されていません。
進行度によっては肝臓や胆管も合併切除することがあります
他の臓器も合併切除となると身体へのダメージが非常に大きな処置になるため、本当に手術すべきか否かについては個々の患者さん毎に慎重に議論する必要があります。

化学療法

外科手術適応のない胆のうがんに対しては化学療法(抗がん剤治療)が標準治療になります
より適切な薬剤を探すために常に研究(治験など)が行われており、進歩の目覚ましい分野です。
ただし、あくまでも根治を目指すことが出来る治療法は外科手術のみであり、化学療法は現在でも「延命治療」の範囲を超えることは出来ていません。

放射線治療

放射線治療の有用性について、現時点では根拠が不十分です
ガイドラインでも「明確な推奨はできない。今後の臨床研究に期待する。」との位置づけです。

当院では、不幸な見逃しを無くし高い精度で診断できるよう心掛けております。
症状、検査結果などで不安のある方はいつでもご相談ください。

参考

胆道癌診療ガイドライン 改訂第3版
がん情報サービス ganjoho.jp
膵・胆管合流異常診療ガイドライン

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