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肝硬変

どんな病気?

  • その名の通り、肝臓が硬く変化した状態を指します。
  • なぜ硬くなるのでしょうか?ウイルス性肝炎などによる慢性的な炎症が起きていると、肝細胞は徐々に壊死します。それを自然治癒力で修復する過程で肝臓が硬くなる原因である「線維化」が生じるのです。
  • 線維化が肝臓全体に及んだ状態が肝硬変です。
  • 肝臓が硬くなることで下に述べるような黄だん、腹水、むくみ、意識障害、食道・胃静脈瘤、肝臓がんなど多岐にわたる症状を起こす病気です

原因は?

2018年の調査では、原因としてC型肝炎が最も多く48%、次いでアルコールが20%、B型肝炎が12%、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が6%、自己免疫性肝炎(AIH)3%、その他・原因不明が7%となっています。
2008年の調査ではC型肝炎が61%、アルコール14%、非アルコール性脂肪肝炎2%であったことと比較すると、C型肝炎は近年の治療薬の進歩で割合が減少している一方で、飲酒や脂肪肝の割合が上昇していることが問題となっています。

症状は?

肝硬変では、肝臓の正常な機能が失われることで実に多岐にわたる症状を引き起こされます。

かゆみ、黄だん

肝臓で代謝されなくなったビリルビンが沈着して、皮膚や白目が黄色くなる「黄だん」かゆみの症状が出てきます。

意識障害(肝性脳症)

代謝の過程で生じるアンモニアは正常であれば肝臓で無毒な物質に分解されます。
この機能が障害されることで有害なアンモニアが血液中に溜まり脳に影響を及ぼすことで「肝性脳症(かんせいのうしょう)」と呼ばれる特徴的な意識障害を起こすことがあります。

腹水、むくみ

肝硬変になると肝臓で「アルブミン」と呼ばれるタンパク質が作られにくくなります。
この「アルブミン」が足りなくなると血液中の水分が血管の外に逃げやすくなります
逃げた水分はむくみや腹水として現れてきます

消化管出血(食道・胃静脈瘤)

肝臓の線維化が進行し硬くなると、血液すら肝臓に入りにくくなります。
肝臓に入れなくなった血液は迂回し、食道や胃の静脈を通って心臓に戻ります。食道や胃の静脈にとっては過剰な血流負荷となるので血管が静脈瘤として腫れてきます。
静脈瘤の壁は薄く引き伸ばされているため破裂しやすく、破裂すると吐血・下血などを起こします

血球(白血球、赤血球、血小板)減少

肝臓に入りにくくなった血液は脾臓(ひぞう)にも逆流し、脾臓が腫れて脾腫(ひしゅ)を起こします。
腫れた脾臓に白血球、赤血球、血小板がトラップされることで血球減少が起きます。
白血球減少では感染症に弱くなり赤血球減少は貧血を起こし血小板減少では血が止まりにくくなります

腎障害

肝硬変では上記のようなアルブミン低下やホルモンの乱れの影響で腎障害が起きることがあります
これを「肝腎(かんじん)症候群」と呼びます。
肝硬変患者さんにとって腎機能悪化は生命予後に関わる大きな問題となります。

肝臓がん

肝臓がんは主に肝硬変から発生します。
肝硬変になった原因によって違いはありますがおおよそ年に5%程度の割合で肝臓がんが発生します
10年後には30~50%もの方が発がんすることになります。

どんな検査があるの?

  1. 血液検査
  2. FIB-4 index
  3. 画像検査(腹部超音波、CT、MRI)
  4. 肝生検(当院での取り扱いはございません)
  5. 胃カメラ

1.血液検査

肝臓の線維化が進行し、硬くなるにつれて「血小板」の数が減少します。
血小板数が10万個以下だと肝硬変を示唆することが分かっています。
つまり大酒のみの方やB型肝炎、C型肝炎など、もともと肝臓が悪い方が採血をした際に血小板10万個以下だと肝硬変まで進行していることが予想される、と言うことです。
同時に白血球や赤血球も減少します。
他にも線維化マーカーと呼ばれる「血中ヒアルロン酸」や「Ⅳ型コラーゲン7S」なども肝硬変では高値となるのでチェックのために計測する場合があります。
加えてB型肝炎C型肝炎原発性胆汁性胆管炎自己免疫性肝炎など、肝硬変の原因となった元の病気を調べます。

2.FIB-4 index

血液検査では「AST」、「ALT」、「血小板数」で簡単に計算できる「FIB-4 index」と呼ばれる数値を算出することで、肝硬変にどれだけ近づいているか、線維化がどれほど進行しているかを推定することが可能です。

3.画像検査(腹部超音波、CT、MRI)

肝硬変の診断には腹部超音波検査が非常に簡便かつ有効です
肝臓表面がゴツゴツしていたり、縁が丸く変化したりと明らかに肝臓の形が変わっていれば肝硬変を疑います。
また当院の超音波検査機器では、肝臓の硬さを数値化できる特殊な機能が備わっており、より正確な診断を行うことが可能です。
超音波検査では肝臓がんも発見することが出来ます。
ただし、どうしても超音波検査だけでは肋骨や肺の影になったりして見えづらい部分が出てきます。
そういった場合にはCT、MRIなどでより詳細な画像検査が必要になります。
CTは血管も良く見えるため食道・胃静脈瘤の画像診断をする際にも威力を発揮します。

4.肝生検(当院での取り扱いはございません)

上記の各種検査結果を総合することで肝硬変の診断を行います。
どうしても決め手を欠き、かつ確実な診断が求められる場合において、従来は肝生検が行われてきました。
体表からエコーで確認しながら安全な場所を狙って肝臓に針を刺し肝組織を採取します。
線維化の進行した肝組織が確認出来れば確定診断することができます。
ただ、肝生検には大出血などのリスクがあることや、上で述べたような超音波検査機器の進歩によって出番は失われつつあります。

5.胃カメラ

肝硬変では、頻繁に食道・胃静脈瘤が合併します
そのため肝硬変と診断した場合には必ず胃カメラをお勧めしています。
破裂しそうな静脈瘤が見つかった場合には総合病院などでの内視鏡治療もしくはカテーテル治療などが必要になります。

治療は?

原因となった肝炎治療

肝硬変の原因が分かれば、まずはその原因に対する治療を行います。
例えばC型肝炎であれば8週間から12週間内服薬を使ってウイルス排除治療を行う場合があります。
B型肝炎であれば、ウイルスは体内から完全に排除することはできませんが抗ウイルス薬を内服することで活動を抑え込むことが期待できます。
原因がアルコールであれば当然禁酒が必要ですし、脂肪肝(NASH)であれば併存していることの多い脂質異常症(高脂血症)糖尿病などの治療などの治療をすべきです。
自己免疫性肝炎原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎などもそれぞれの解説ページを参照してください。

適切な栄養

肝硬変患者さんは低栄養となりやすいのですが、低栄養は生存率の低下と関連しているため適切な栄養摂取が重要です
その一つとして有効と考えられているのが寝る前に200kcalの栄養摂取をする「就寝前エネルギー投与(late evening snack, LES)」と呼ばれる方法です。
ただ単に200kcalを摂取するのでは肥満など別問題が生じてしまうため一日の食事から200kcal分を減らしておきます。
これによって肝硬変の状態改善効果があるとされています。
合併症によって違いはありますが、大まかなところで一日の総摂取カロリーは25~35kcal/kg(例えば50kgの人なら1250~1750kcal)とします。
その内、タンパク質は1~1.5g/kgが適切とされています。
肝臓が糖分を合成しにくくなっており飢餓状態になりやすいことから一日4回の分割食とすることも推奨されております

分枝鎖アミノ酸製剤(BCAA)

肝硬変全般で「分岐鎖アミノ酸」と呼ばれる重要なアミノ酸の一群が不足しているため、これを内服薬として補充します
補充することで肝硬変の進行や発がん、肝性脳症を抑えることが出来ると言われています。

腹水・むくみ治療

塩分を摂取しすぎると腹水が増えることが分かっています。
ただし減塩しすぎて食欲が落ちてしまうと栄養不足になってしまいます。
そこで塩分は食欲を損なわない程度に1日5~7gに抑えることが推奨されています。
また直接的に腹水を減らすには「スピロノラクトン」「フロセミド」「サムスカ」などの利尿剤があります。
ミネラルバランスを乱す副作用などに注意する必要はありますが、適切に調整することで大きな効果が期待できます。
薬剤などでどうしてもコントロールできない状況においては直接お腹に針を刺して腹水を抜く腹水穿刺排液や、それをろ過して点滴のように血管に戻す腹水ろ過濃縮再静注法(CART)などが行われることもあります。

肝性脳症の治療

肝性脳症は血液中のアンモニア濃度が上昇することによって引き起こされます。
よって、アンモニアの生成を抑えることが重要です。
アンモニアは腸でも作られていますが、ラクツロースという下剤やある種の抗生物質にはそれを抑制する効果があるとされており、よく用いられます。
分枝鎖アミノ酸製剤(BCAA)も肝性脳症に有効であり、特に急に起きた肝性脳症の治療には点滴でのBCAA補充が第一に行われます。
また肝硬変では「亜鉛」、「カルニチン(アミノ酸由来の物質)」なども欠乏しやすくそれらの補充も有効とされています。

食道・胃静脈瘤治療

こちらのページで解説しております。

肝移植

食道・胃静脈瘤や高度の黄だん、大量腹水、頻繁な意識障害(肝性脳症)などが出現してくるようだと肝移植の適応になります
日本においては脳死肝移植は少なく、肝移植の99%は生体肝移植です。扱っているのはごく限られた医療機関になります。

参考:肝硬変診療ガイドライン2020 (改訂第3版)

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