大腸がん
どんな病気?
- 大腸の粘膜から発生した異常な細胞(がん細胞)が無秩序に増殖してしまう病気です。他の臓器(肝臓や肺など)に転移してしまうこともあります。
- がんは悪性腫瘍とも言います。悪性腫瘍と良性腫瘍の違いは、良性は無秩序に増殖することはなく、ある一定の大きさまでしか育たず、転移することもない点です。
- 大腸がんはポリープの形をとったり、ゴツゴツした塊の形をとったり、腸の中に充満するようになったりと見た目は様々です。
- 大腸がんにかかる方は年々増えてきており、最新の統計では第1位(一年間で152254人)となっています。
- 同じように大腸がんで亡くなる方も増え続けており、最近になって胃がんを逆転し現在第2位(51788人)となっております。(女性に限ると第1位です)
- 男女とも50歳を超えたあたりから大腸がんにかかる方が増えていきます。
原因は?
- 遺伝
- 高カロリー摂取
- 高脂肪食
- 肉類
- 肥満
- 大量飲酒
- 胆のう摘出術後
- 喫煙
大腸がんは遺伝する病気と思ってはいませんか?それは確かに一部正しくもあり、間違いでもあります。
実は「遺伝性大腸がん」と呼ばれ特定の遺伝子異常が明らかとなっている大腸がんは全体の約5%に過ぎません。また全体の25%程度は何らかの遺伝的要因が関与していると言われています。これらを合わせると、全体の約30%程度に遺伝が関与していることになります。
残りの70%は遺伝とは関係なく「散発性大腸がん」とも呼ばれます。
そう言った大腸がんの原因として高カロリー摂取、高脂肪食や肉類の摂取、肥満、大量飲酒、胆のう摘出後、喫煙などが指摘されています。これらはどれか一つが決定的な要因となるのではなく複合的に関与していると考えられます。
一方で、適度な運動や食物繊維の摂取、アスピリン内服は大腸がん発生を抑えると言われています。
症状は?
- 便秘
- 腹痛
- 血便、便に血が混じる
- 大腸がん検診で便潜血が陽性
- 便が細くなる
- 固形便が出ない
- 下痢しか出ないがお腹が張る
- 貧血
- 食欲低下、体重減少
早期がんではほとんど症状が出ませんが血便などを起こすことはあります。
進行がんでは上に挙げたような腹痛、血便、体重減少、食欲低下、高度な便秘、腸閉塞などさまざまな症状が起こり得ます。特に大腸がんが原因で腸閉塞を起こした場合は命の危険があり緊急手術や緊急内視鏡などの処置が必要になります。
一方で、進行がんでも無症状のことも多いため、無症状だからと言っても決して安心はできません。少なくとも大腸がん検診は欠かさず受けるようにしましょう。
どんな検査があるの?
- 大腸カメラ
- 注腸検査(バリウム検査)
- 血液検査(貧血、腫瘍マーカーなど)
- CT検査
ほぼ全ての大腸がんは大腸カメラで診断されています。大腸カメラで観察し、大腸がんを疑った場合にはその場で直接細胞を採取(生検)し確定診断を行います。当院の大腸カメラについてはこちらのページもご参照ください。
血液検査も行い貧血になっていないか、腫瘍マーカーと呼ばれるがん細胞由来の物質が増えていないかなどもチェックします。
CT検査では大腸がんの周囲への広がりや転移を調べることが可能で、進行度(ステージとも言います)を決定するのに大きく貢献します。ステージによって治療方針が大きく変わりますので非常に重要です。ステージは0~Ⅳcに分けられており数字が大きい方が進行していることを表しています。ステージ0のほぼ全て、ステージⅠの一部も内視鏡治療の対象となります。
治療は?
- 内視鏡治療
- 外科手術
- 化学療法(抗がん剤治療)
- 対症療法、緩和ケア
ほとんどの早期大腸がんは「大腸ポリープ切除」、もしくは「内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)」で治療することが出来ます。これは大腸カメラのみで行える治療ですのでお腹をあける必要がありません。内視鏡専用のスネア(金属製の輪っか)や電気メスを使用します。
進行大腸がんになると外科手術が必要です。進行度によっては腹腔鏡手術が可能な場合があります。これは小さな傷ですみ、術後の回復も早いと言われています。そうでない場合は通常の開腹手術になります。
大腸がんのできた場所によっても手術方法が変わってきます。特に肛門に近い位置に発生した直腸がんの場合には人工肛門が必要になることがあります。
大腸から離れた臓器にまで転移している場合には手術でがんを取りきることが困難であることから化学療法が推奨されております。状況によっては転移したがんには手を付けず、原発巣である大腸がんの部分だけ切除してから化学療法を行うこともあります。
ただし化学療法では根治は望めず、あくまでも延命治療であることを理解しておく必要があります。
以上のような治療法が適応とならない場合は緩和ケア、対症療法(貧血に対して輸血をする、大腸が狭くなったら内視鏡を使ってステントを入れて便の通りをよくするなど、がんそのものを退治するのではない治療)が選択されます。
最後に、国立がんセンターから出ているがん統計情報(ganjoho.jp)によると大腸がんステージⅠの5年生存率は94.8%と非常に高い数値ですが、ステージⅡで88.2%、ステージⅢで77.5%、ステージⅣ(遠隔転移あり)で18.6%とにまで急落します(ステージ0はホームページに公開されておりませんが100%に近いと思われます)。
この事実からは大腸がんは少なくとも遠隔転移を起こす前に発見、治療することの意義が非常に大きい病気と捉えることが出来ます。特にステージ0(良性ポリープと見分けがつかないほど初期の段階)では内視鏡治療が可能です。ステージⅠでも一部は内視鏡治療可能です。大腸を切除しなくともよい段階で早期発見し、治療をすることで治療後も治療前と同じ日常生活を送ることが出来ます。特に直腸がんでは人工肛門のリスクもあり、その意義が強いと言えるでしょう。
適切に検査を受けることで命だけではなく、健康寿命も守る、守れる時代になっています。症状がなくとも大腸がん検診、気になる症状があれば大腸カメラも一度考えて頂ければと思います。
参考:大腸癌治療ガイドライン 2019年版
遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2020年版
大腸癌診療update2016 大腸癌の疫学と早期診断・治療の進歩