食道がん
どんな病気?
- 食道とは、いん頭(口の奥)から胃を繋ぐ食物の通り道です。
- ここに発生したがんを食道がんと呼びます。
- がんとは異常な細胞(がん細胞)が無秩序に増殖してしまう病気です。他の臓器(肝臓や肺、脳など)に転移してしまうこともあります。
- がんは悪性腫瘍とも言います。良性腫瘍との違いは、良性は無秩序に増殖することはなくある一定の大きさまでしか育たず、転移することもない点です。
原因は?
- 飲酒と喫煙が主な原因。
- 例えば飲酒しない人と比べて一日2合以上飲酒する人は4倍程度のリスクがあるとされています。
- 年に40箱以上の喫煙をする人は非喫煙者の5倍近くのリスクとされています。
- 日本人に多い、コップ1杯程度のビールで顔が赤くなる体質の方が習慣的に飲酒をすると、赤くならない体質の人と比較して口腔・咽頭がん(これらも食道がんと性質が似ています)や食道がんのリスクが3.1~18.5倍になるとも指摘されています。
症状は?
- 初期症状はほぼ無症状。
- あるとしても胸やけなど、軽微な症状。
- 進行がんになると食事が通りにくくなり、詰まることによる嘔吐、強い胸痛などの症状がよく起こります。
どんな検査があるの?
- 胃カメラ
- バリウム検査(当院では扱っておりません)
- 早期がんの発見には内視鏡検査が特に威力を発揮します。
- 内視鏡では、バリウムでは分からないような粘膜のわずかな凹凸や色調の違いなどからがんを疑い、観察と同時に組織検査をすることで診断まで行うことが可能です。
治療は?
- 早期がんの場合は、内視鏡を使って表面のがんだけ剥ぎ取る形で治療を行うことが可能です。
- 進行がんでは外科手術や化学放射線療法(抗がん剤と放射線治療の組み合わせ)などが行われることになります。
- 手術は胃がんや大腸がん等よりもお身体へのダメージが大きくなることが多くなりますから(一般的な食道がんの手術では開胸といって胸を開ける必要もあります。条件が揃えば胸腔鏡を用いて傷口を最小限にした手術方法もあります。)、出来るだけ早期のうちに発見し、内視鏡治療で済ませたいところです。
- 化学放射線療法もがんの進行度によっては手術と同等の効果が期待できます。
ただしお身体への負担は大きくなりがちで治療中、治療終了後、治療終了後時間が経ってからでも合併症に苦しむことが少なくありません。
繰り返しになりますがやはり早期発見、早期(内視鏡)治療が強く望まれます。 - 残念ながら治癒(がんの根治)が望めない状態で病気が発覚する場合もあります。
この場合は患者さん個々の病状、希望などによって選択肢がありますが一般的には抗がん剤治療が推奨されます。
抗がん剤によってがんを小さくしたり、進行を遅らせたりすることが期待できます。 - 通り道が完全に閉塞して、食事が全く通過しないなどの時は「ステント」と言って特殊な金属で出来た網目状の筒を内視鏡で挿入し、食事の通りを確保することもあります。
- 以上のような治療選択肢を提供可能な医療機関へご紹介します。
参考
内視鏡データリファレンスブック2017 咽頭・食道癌のリスクファクターとスクリーニング・サーベイランス
この記事を執筆した人
金沢憲由
日本消化器病学会 消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医
日本肝臓学会 肝臓専門医
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化管学会 胃腸科専門医
難病指定医
秋田大学出身
月間400件以上の内視鏡検査を行なう。
丁寧でわかりやすい医療の提供を志す。
人間ドックによる予防医療にも注力している。