肝のう胞(ほう)
どんな病気?
- のう胞 (cyst) とは液体の溜まった袋のことです。
- 肝のう胞とはその名の通り、肝臓の中にできたのう胞のことです。
- 基本的に無症状で、人間ドックなどで偶然発見されることも多い病気です。比較的多くの方に見つかります。
原因は?
- ほとんどは原因不明
- 腫瘍
- 遺伝
- 寄生虫(エキノコックス症)
ほとんどは原因不明の、特に問題を起こさないのう胞です。
一方で、腫瘍が原因でのう胞が発生することもあります。
まれではありますが、良性ののう胞だと思っていたら徐々に大きくなりがんが判明するような場合も存在します。
遺伝性の「多発性のう胞腎」という病気があります。
詳細は厚生労働省関連サイトをご参照ください。
これは腎臓に無数ののう胞が発生する病気ですが、実は肝臓にも多数ののう胞を作ることがあります。
大きくなると圧迫感や腹痛、発熱など多彩な症状を呈することがあります。
他の肝のう胞と比較して厄介なのは、数が多いので治療が施しにくい点です。
肝のう胞は本来良性の疾患ですが、多発性肝のう胞は生活の質を大きく落とし、時には命まで脅かすこともあります。
他に、珍しいものとして寄生虫が原因となることもあります。
北海道に生息するキタキツネが主な感染源です。
キタキツネの便に「エキノコックス」と呼ばれる寄生虫の卵が混ざっていることがあり、これがなんらかの理由で人の手や食事などを介して口から入ることで感染します。
この病気でできたのう胞は10年以上かけて徐々に大きくなり、肝臓に関する様々な症状を起こし、最後には死に至ることもある恐ろしい病気です。
症状は?
- ほとんどは無症状
- 腹痛
- 圧迫感、張り
- 黄だん
- 発熱
ほとんどの場合は無症状です。
症状が出るとすれば、のう胞がある程度大きくなった場合で、お腹の圧迫感や張りが主体です。
通常は肝のう胞は無制限には大きくなりませんが、中には際限なく巨大化し胃や肝臓内の胆管(たんかん)など他の臓器を圧迫して症状を起こす場合もあります。
例えば胃を圧迫すれば食欲不振、胆管を圧迫すれば黄だんが起きたりします。
また、のう胞の中にばい菌が混入してしまうと炎症を起こし膿が溜まって腹痛や難治性の発熱を起こします。
どんな検査があるの?
- 腹部超音波検査(エコー)
- CT検査
- MRI検査
肝のう胞を最も簡便に診断することができるのは腹部超音波検査です。
腫瘍が疑われる場合や多発している場合、炎症を伴っている場合、胃や胆管など他臓器への圧迫症状が出ている場合などではCTやMRIを使って、より詳細に精査を行います。
他の目的で受けた腹部超音波検査やCTで偶然発見されることも多くあります。
治療は?
- 無症状なら治療不要
- 経皮的ドレーン(排液チューブ)留置
- 外科治療
無症状の場合、治療は原則不要です。
症状を起こした場合に行うことが多いのが、皮膚の上からの排液チューブ留置です。
これは腹部超音波検査でリアルタイムに安全に針を刺せるルートを確認しながら排液チューブを留置する治療法です。
「経皮的のう胞ドレナージ術」などと呼ばれます。
ドレナージ(排液)によってのう胞はぺちゃんこになりますが、排液をやめてしまうと非常に再燃しやすいことが分かっています。
そのため、排液チューブを抜去する前に特殊な薬剤をのう胞内に注入して、再燃しにくくすることも良く行われています。
これら内科的治療の難点は、繰り返し治療が必要になることも多い点です。
そういった背景から、より高い根治性を求めて外科手術が選択される場合もあります。
外科手術には「開窓術」といってのう胞を人工的に切開して開放する術式や、主にエキノコックス症で行われる「肝切除術」などがあります。