食道裂孔(れっこう)ヘルニア
どんな病気?
- 食道は横隔膜を貫いて胃と繋がります。
- この横隔膜を貫く部分を食道裂孔と言います。
- 食道裂孔がゆるんで広くなることで、胃の一部が横隔膜を越えて食道の方向に飛び出してくる状態のことを「食道裂孔ヘルニア」と言います。
ひどい時には胃の全部が飛び出すこともあります。 - 高齢者に多く、70歳代男性の約20%、70歳代女性の約30%に見られ、80歳代ではさらに上昇するとも言われています。
- ヘルニアと聞くと真っ先に思い浮かぶのは腰の椎間板ヘルニアでしょうか。
そもそも「ヘルニア」とは体の一部があるべき場所から飛び出してしまった状態のことです。腰椎椎間板ヘルニアは椎間板が飛び出します。同様に食道裂孔ヘルニアでは胃が飛び出すという事です。
原因は?
- 加齢
- 亀背
- 肥満
- 妊娠
加齢により横隔膜の食道裂孔に存在する靭帯が緩み、食道裂孔ヘルニアが発生しやすくなります。
加齢性の変化としては他にも「亀背(きはい)」が挙げられます。これはいわゆる、背中が曲がった状態のことです。腹圧が上昇しやすく食道裂孔ヘルニアの要因となります。
肥満や妊娠でも腹圧がかかりやすい事から、お腹の中にある胃袋が食道の方向に押し出されヘルニアが起きます。
症状は?
- ほとんどが無症状
- 胸焼け(逆流性食道炎)
- 胸痛
- 嘔吐、つかえ感
胃カメラをしていると食道裂孔ヘルニアは非常によく見かけます。ただ、ほとんどの方には何ら自覚症状はありません。
症状がある場合、1番多いのは胸焼けなど逆流性食道炎に伴う症状です。食道裂孔ヘルニアは食道から胃に繋がる部分が緩くなる疾患ですので、胃酸が逆流しやすくなってしまうのです。人によっては胸痛に悩まされることもあります。
さらに、ヘルニアが高度に進行すると食物の通過に影響を及ぼし、嘔吐、つかえなどが生じてきます。
どんな検査があるの?
- 胃カメラ
- 胃透視(バリウム検査)
- CT
一般的には胃カメラや胃透視検査で偶然見つかります。
稀に、高度の食道裂孔ヘルニアになると他の目的で撮影したCTで診断されることもあります。
治療は?
- 胃酸分泌抑制薬
- 内視鏡治療
- 外科手術
食道裂孔ヘルニアそのものの治療と言うよりは、それに伴い出現した逆流性食道炎の治療が必要になる事があります。
この場合は胃酸分泌抑制薬を用います。これは胃潰瘍に使用される薬剤と全く同じものであり、胃酸の分泌を少なくすることで症状を和らげます。
逆流症状が良くならない時などには外科手術が行われる場合があります。主に緩くなった食道裂孔を縫合するなどして締め直す「噴門(ふんもん)形成術」が行われます。腹腔鏡手術となることが多いようです。
ちなみに噴門とは胃の入り口のことです。
その他特殊な治療として、ある程度までの食道裂孔ヘルニアであれば内視鏡で治療できる場合があります。内視鏡的噴門粘膜切除術、もしくは内視鏡的噴門粘膜焼灼術と呼ばれ、ごく一部の病院のみで扱っています。
日本消化器病学会 消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医
日本肝臓学会 肝臓専門医
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化管学会 胃腸科専門医
難病指定医
秋田大学出身
月間400件以上の内視鏡検査を行なう。
丁寧でわかりやすい医療の提供を志す。
人間ドックによる予防医療にも注力している。