メニュー

原発性胆汁性胆管炎(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん)

どんな病気?

  • 自分自身の免疫細胞が何らかの理由によって暴走し、肝臓の中にある細い胆管(たんかん)を誤って攻撃し、破壊してしまいます。
  • 胆管とは胆汁(たんじゅう)が流れるための管です。ここが破壊された結果、行き場を失った胆汁が慢性的に肝臓内にうっ滞します。
  • 胆汁の主成分であるビリルビンが血管内に逆流して全身に黄色いビリルビンが沈着し黄だんが生じます。
  • うっ滞した胆汁などにより肝細胞も破壊され徐々に肝硬変へと進展していきます。
  • 中年以降の女性に多い(男女比約1:7)。
  • 20歳以降に発症します。
  • 毎年300人程度の方が診断されています。患者数全体では2008年で50000~60000人と推計されています。これは20歳以降の人口100万人あたり750人の計算になります。あまりピンとくるような数字ではありませんが、まれな病気、ということですね。
  • 医療者の間ではPrimary(原発性) Biliary(胆汁性) Cholangitis(胆管炎)の頭文字をとってPBC(ピービーシー)と略します。

原因は?

  • 自己抗体
  • 遺伝的要因
  • 環境的要因

発症の原因自体は未だに不明です。分かっていることは、自己抗体(誤って自分の体を攻撃する抗体)の一つである「抗ミトコンドリア抗体(AMA)」が出現する確率が非常に高いことです。この抗体は他の病気では出現しにくく(疾患特異性が高い)、PBCに特徴的です。

また同一親族内で発症する可能性が高いとの報告や、一卵性双生児で一方がこの病気であれば他方も発症する確率が高いという研究結果があります。このことは、遺伝が全てではないですが少なくとも影響はしており、そこに環境的要因が加わることで発症する病気であることを示唆しています。

症状は?

  • かゆみ、黄だん
  • 脂質異常症
  • ビタミン欠乏症
  • 肝硬変(むくみ、腹水、食道静脈瘤、肝性脳症など)
  • 肝臓がん
  • 慢性甲状腺炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群の合併

実は原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診断を受けた方の多く(70~80%)に自覚症状はありません。

はじめに出現する症状は、多くの場合がかゆみです。そこから数年すると黄だんが出現します。行き場を失い血液に逆流したビリルビンが皮膚に沈着するとかゆみ、黄だんが出るのです。
胆汁にはコレステロールが含まれるため、うっ滞することで脂質異常症も起こりやすくなります。

それから胆汁には脂肪を腸から吸収しやすくする作用があります。うっ滞するとこの機能が働かなくなり、脂溶性ビタミンであるビタミンDなどの欠乏を招きます。ビタミンDは骨を作るため、足りなくなると骨粗しょう症も起こるのです。

ちなみにこの病気の名称は2016年に原発性胆汁性“肝硬変”から原発性胆汁性“胆管炎”に変更になった経緯があります。

この病気が発見された時代では肝硬変に進展している患者さんがほとんどだったのでしょう。現在は適切な医療を受けられる方が増えたため肝硬変になる前、無症状の段階で発見される方が増えました。ただし病気の性質が変わったわけではありませんから放置すると肝硬変になることがあります。

肝硬変まで進展してしまうと全身のむくみ、腹水、意識障害(肝性脳症と呼びます)、胃や食道の静脈瘤など様々な症状を引き起こします。肝硬変には肝臓がんも発症しやすいため要注意です。肝硬変については別ページで解説しておりますのでそちらもご覧ください。

PBCには自己免疫性疾患としての性質があることはすでにご説明しました。自己免疫性疾患は他の自己免疫性疾患も合併しやすいことが知られておりPBCも例外ではありません。関節リウマチ、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などは代表的な合併疾患です。

どんな検査があるの?

  • 血液検査
  • 肝生検(当院での取り扱いはございません)
  • 画像検査(腹部超音波、CT、MRI)
  • 胃カメラ

最も多いパターンが会社検診や人間ドック、または消化器内科以外の科で行った採血で肝臓の数値が高かったことで精査のために来院される場合です。以下はこの場面を想定した流れで解説します。

①PBCを疑うのは肝臓の中でも「ALP」「γ‐GTP」が高い場合です。これらは「胆道系酵素」と呼ばれPBCのように胆汁がうっ滞する病気で上昇しやすいのです。たまたま内服した風邪薬などの影響で一時的に高かっただけのこともありますから「ALP」「γ-GTP」の再検査は必要です。

それと大事な項目が上にも述べた「抗ミトコンドリア抗体(AMA)」です。AMAはPBCの90%以上で陽性となり、かつ他の病気では出現しにくいため診断に広く用いられています。

自己免疫性肝炎、甲状腺機能異常でも胆道系酵素が症状する場合があるため血液検査でそちらもチェックします。

②他の病気が隠れていないか画像で確認することも非常に重要です。具体的には胆管(たんかん)がん、膵(すい)がん、原発性硬化性胆管炎などでも胆道系酵素が上昇することがあります。

腹部超音波検査、CT、MRIなどでこれらの病気がないか調べることが可能です。実際にはいきなりCTやMRI検査よりは、簡便に行える超音波検査が多用されます。

③抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性になった場合。他の病気も否定できていればPBCと確定診断可能です。問題はAMA陰性であった場合。

上に述べた各種検査で他の病気の可能性も低いとなるとAMA陰性でもPBCの可能性は捨てきれません。少数派ですがAMA陰性のPBCの方もいるのです。そういった場合には肝生検を行います。

体表からエコーで確認しながら安全な場所を狙って肝臓に針を刺し肝組織を採取します。PBCに特徴的な組織像が確認出来れば確定診断可能となります。

④最終的にPBCと診断された場合、食道・胃静脈瘤が合併していないか、肝硬変、肝臓がんに至っていないかなどを確認する必要があります。この段階で胃カメラを追加したり、CT・MRIなどでより精密な画像評価を実施することがあります。

治療は?

①ウルソデオキシコール酸
②脂質異常症治療薬
③かゆみ止め
④骨粗しょう症治療薬
➄肝硬変に対する治療
⑥肝移植

①ウルソデオキシコール酸(ウルソ)

PBCには根本的な治療法はありませんが、ウルソにはうっ滞した胆汁の流れを良好にする作用があり現在は第一選択として広く使われています。

主な副作用は下痢くらいで重篤なものは報告されておりません。

PBCと診断されたらすぐ投与開始する場合や、ある程度肝障害が進行してから開始する場合などがあります。

②脂質異常症治療薬

ウルソのみで効果不十分な場合に「フィブラート系」と呼ばれる脂質異常症治療薬を併用すると胆道系酵素の改善が期待できると言われています。ただし長期的に本当に良好な効果をもたらすかは不透明です。

③かゆみ止め

「コレスチラミン」、「コレスチミド」はPBCのかゆみに対して第一選択とされています。こちらも本来は脂質異常症治療薬です。

他には一般的なかゆみ止めである「抗ヒスタミン薬」も用いられます。

特殊なところでは、慢性肝臓病に伴うかゆみに対して保険適応のある「ナルフラフィン」という薬剤も使われることがあります。

④骨粗しょう症治療薬

上で述べたようにPBCは骨粗しょう症を合併しやすいことが知られていますが、PBC自体中年以降の女性に発症しやすいことから、より一層骨粗しょう症の問題が出てきます。一般的な骨粗しょう症治療薬である「ビスフォスフォネート製剤」や「活性型ビタミンD製剤」などがよく用いられます。

➄肝硬変に対する治療

こちらのページをご確認ください。

⑥肝移植

肝硬変にまで至り、さらに食道静脈瘤や高度の黄だんなどが出現してくるようだと肝移植の適応になります。日本においては脳死肝移植は少なく、多くは生体肝移植が行われています。扱っているのはごく限られた医療機関になります。

参考:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2017年)

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME