機能性ディスペプシア(FD)
どんな病気?
- 検査で異常が見つからないにも関わらず胃の痛みや胃もたれなどのお腹の症状がある状態のことです。
- 一昔前までは「慢性胃炎」と混同されていました。実際は似て非なる病気です。胃炎がなくても機能性ディスペプシアは起こります。
- 英語ではfunctional dyspepsiaの頭文字をとって「FD」と言います。(医療者はよくFDと呼んでいます)
- インターネット調査では一般住民の7%、健診での調査では11~17%の方が機能性ディスペプシアであったと報告されています。
- 上腹部症状で病院を受診した方に限定すると約50%もの割合で機能性ディスペプシアを有していたとの報告もあります。
原因は?
- 胃の動きの異常
- 胃の知覚過敏
- 心理的要因
- 胃酸過多
- 遺伝的要因
- 生育環境(虐待を受けた経験など)
- 感染性胃腸炎後
- 運動・不眠・高脂肪食・食習慣の乱れなどのライフスタイル
- 腸内細菌バランス
- 胃の形
上記に並べたような多数の原因が絡みあって発症すると考えられています。ハッキリとわかっていないことも多く、現在も研究が続けられています。
症状は?
- 食事中にすぐに満腹になる
- 食後にお腹が張る
- みぞおちが痛む
- みぞおちが焼けるような感じがする
以上のような症状が慢性的に続くことが特徴です。その結果「生活の質」が低下することが最終的に大きな問題になります。こういった症状があっても胃カメラで異常が発見されないときは機能性ディスペプシアの可能性があります。
どんな検査があるの?
- 問診・診察
- 胃カメラ
- ピロリ菌検査
- 血液検査
- 腹部超音波(エコー)検査
- 大腸カメラ
特に重要なのは問診や身体診察です。治療ガイドラインでは胃カメラなどの検査はせずとも、それだけで機能性ディスペプシアと診断しても良いことになっています。ただし問診や診察だけでは、必ず胃がん、食道がんなどの重大な病気の見落としが発生します。
当院では患者さんと相談しながら可能な範囲で胃カメラ、腹部エコーなどの必要な検査を行い取り返しのつかない重大な見落としがないような体制で診療にのぞんでおります。
治療は?
- 胃酸分泌抑制薬(ネキシウム、タケプロン、タケキャブなど)
- 胃運動機能改善薬(アコファイドなど)
- 漢方(六君子湯など)
- 抗不安薬・抗うつ薬
- 心療内科治療
機能性ディスペプシアの症状に悩まれている患者さんの多くが、なかなか解決しない症状に対して大きな不安を抱いています。また検査で異常が見つからないからと言って決して精神的な問題で片づけられるものはありません。
強調しておきたいことは機能性ディスペプシアが胃潰瘍や胃がんのような目に見える病気と同じような「一つの病気である」という点です。ですから機能性ディスペプシアに見合った適切な医療を受ける必要があります。
一方で残念ながら現時点ではいわゆる特効薬はありません。まずは食事を含めた生活習慣の改善、胃酸分泌抑制薬、胃の運動改善薬、漢方などを試しますがそれで解決しない事も多くあります。
次の段階では別の運動改善薬、漢方、抗不安薬・抗うつ薬なども試しながら治療を進めていきます。
それでも症状の解決が得られない場合には高次医療機関や心療内科(適切な医療機関へご紹介致します)での治療を検討する、といった手順になります。
参考:機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)