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急性膵炎(きゅうせいすいえん)

どんな病気?

  • 何らかのきっかけで膵臓(すいぞう)の消化酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)が暴走し、膵臓自身のみならず、お腹の中に炎症、壊死を引き起こす疾患です。
  • この消化酵素はたんぱく質を溶かす作用があります。人間の身体の大部分はたんぱく質でできているため、暴走されると非常に厄介のなのです。
  • 重症度によっては膵臓周辺の内臓脂肪を溶かしたり、胃、小腸、大腸などにまで炎症を波及させ正常な機能を奪います。
  • 言わば、お腹の中に重度の「やけど」を引き起こす疾患と言えます。
  • 急性膵炎は検査結果によって「軽症」と「重症」に分類されます。これは「予後因子」と呼ばれる血液検査結果などからなる要因と、「造影CT grade」と呼ばれる要因から判定します。
  • 2016年に行われた全国調査では軽症急性膵炎の死亡率は0.5%であったことに対し、予後因子・造影CT gradeの両方とも「重症」の判定となった重症急性膵炎では19%にも及びました。

原因は?

2016年に行われた全国調査結果によるとアルコール性、胆石性、特発性が3大原因でした。ちなみに特発性とは医学用語で原因不明、のようなニュアンスで使われます。
男女別にみてみると、男性はアルコール性が一番多く、女性では胆石性が一番でした。年代別ではアルコール性が40代に多く、胆石性は高齢者に多かったようです。つまりアルコール性急性膵炎は中年男性に多く、胆石性急性膵炎は高齢女性に多いということです。
他の原因には脂質異常症(特に中性脂肪)、薬剤による副作用、医原性(内視鏡処置の合併症など)、膵臓がんなどの腫瘍によるものなどが挙げられます。

このように原因は多岐にわたりますが、胆石性かそれ以外か、で治療方針が大きく分かれます。そういった意味で原因を早急に探ることが大変重要になってきます。

症状は?

  • 急激な腹痛
  • 嘔吐
  • 発熱
  • 背部痛
  • 腹水
  • 腸閉塞

急性膵炎患者さんのほとんどが腹痛を訴えます。その他にも発熱や嘔吐などの症状が出現することもあります。
また膵臓は背中側に位置しているため背部痛が出ることもあります。炎症が悪化すると内臓から水分がしみ出し、腹水も出現します。腸に炎症が波及すれば正常な蠕動が障害され、(麻痺性)腸閉塞を起こすこともあります。

どんな検査があるの?

血液検査

血液検査では炎症マーカーである「WBC(白血球)」や「CRP」が上昇します。また膵酵素(アミラーゼやリパーゼなど)の数値も高くなります。
その他にも急性膵炎の重症度を数値化するために、腎機能を表す「BUN」「Cr」や、「カルシウム」、「血小板」、「LDH」などの数値が必要になります。

腹部超音波検査(エコー)

エコー検査は最も簡便で、放射線検査のようにお身体への影響を心配する必要もなく、外来でサッと行うことのできる非常に有用な検査です。
炎症で腫れた膵臓や膵臓周囲の炎症性変化、腹水、胆石の有無などを確認することが可能です。特に総胆管結石や総胆管拡張の有無を調べることは、内視鏡治療の必要性を判断するのに大きく影響します。

このようにエコー検査は多くの利点を有する検査ですが弱点もあります。例えば高度の肥満患者さんや腸のガスが多い方、食後などでは超音波ビームが届きにくく内臓を描出しにくくなるため、何も診断できなくなります。

ちなみに総胆管結石がある場合、エコー検査で映し出すことが出来た確率は報告によって大きく異なっており20~90%とされています。大きな幅がありますね。つまり、エコー検査はある程度不確実な要素をはらんだ検査だとイメージして頂くのが良いかも知れません。

CT検査

CT検査はエコーのように内臓脂肪やお腹のガスの影響を受けることなく、安定して膵臓の状態を画像化することが可能であることのみならず、造影CTを行うことによって膵臓の壊死の有無、周囲への炎症波及をいっぺんに見やすい画像として映し出すことが出来ます。 急性膵炎の重症度を判定する際に上記のような「膵臓の壊死有無」や「周囲への炎症波及範囲」を用いることがガイドラインに定められています。
一方でCTの弱点はどうしても一定量の放射線被ばくがあること、造影CTは腎機能の悪い方には原則的に実施できないこと(さらに悪化することがあるため)、エコーよりも胆石を映し出す能力が低いことなどが挙げられます。

MRI検査

MRIはエコーやCTよりも胆石を映し出す能力が高く、胆石性急性膵炎かどうかを判定するのには一番有用です。
他にも優れている点は、膵管だけ切り取って立体画像を映し出すことが出来る事です。これによって膵臓がんや膵・胆管合流異常、膵管癒合不全などが描出され、急性膵炎の診断に役立ちます。
このように他にはない特徴、強みを持つにも関わらず、磁気のみを利用するため被ばくがないことが大きな利点です。
欠点は狭い空間に30分ほど横になりその間じっとしている必要があることから、閉所恐怖症の方や認知症などの方は難しい点です。

治療は?

  • 大量点滴
  • 鎮痛剤
  • 内視鏡治療

大量点滴

残念ながら急性膵炎に特効薬は存在しません。発症早期に大量に点滴をすることが一番重要な治療に位置付けられています。ほかの疾患などで絶食の必要がある場合、一般的な成人だと1日に2Lほどの点滴が必要です。
一方、急性膵炎の場合は5L程度の点滴が必要とも言われています。なぜこれほど大量の点滴が必要なのでしょうか?
急性膵炎では膵臓を中心とした強い炎症が広がることにより、そこら中からどんどん水分が漏れ出します。これによって高度の脱水や血圧低下などが引き起こされるため、体液のバランスを保つために水分補充も急いで行う必要があるのです。ただし大量に点滴することはデメリットもあります。高齢者や心不全、腎不全患者さんでは水分が処理しきれなくなり心不全を発症、悪化するなど合併症を引き起こしかねません。
こういった理由もあり、実は現在においても適切な点滴の量、種類、速度は定まっておらず、今もなお議論され続けています。

鎮痛剤

急性膵炎における腹痛は激しく、何時間も、時には数日間も持続します。ですから適切な鎮痛を行うことが極めて重要です。
痛みが比較的軽い場合にはごく一般的な鎮痛剤であるアセトアミノフェンや、ロキソニンに代表されるようなNSAIDs(エヌセイズ)などを使用します。重症の膵炎でNSAIDs等を使用しても痛みが制御できない場合には、より鎮痛効果の大きい麻薬性鎮痛剤が用いられます。

内視鏡治療

これまでも触れてきましたが、急性膵炎のうち胆石が原因になったものに対しては他と治療方針が大きく異なり、内視鏡治療が考慮されます。具体的には急性胆管(たんかん)炎を併発していたり、黄だんが出現している場合に実施されます。でも、そもそもどうして胆石が膵炎を起こすのでしょう?
その答えは胆管と膵臓の位置関係にあります。実は胆管と膵管は出口が共通になっていて、その部分を「十二指腸乳頭部」と言います。胆石が十二指腸乳頭部にはまり込むと胆管も膵管も閉塞するので急性胆管炎と急性膵炎を同時に発症するのです。
胆石がはまり込んだままだと、胆管炎も膵炎も悪化してしまうため、早急な内視鏡処置で胆石を除去したり位置を移動させたりすることで悪化を防ぎます。

急性膵炎は医療が飛躍的に進歩した現在においても命まで落とすことがある、本当に怖い病気です。
過度な飲酒は控える、脂質異常症など胆石の原因となるようなことに意識を払う、健診の腹部エコー検査などで定期的に胆石のチェックをするなど、それぞれにとって取り組みやすい対策を取って頂ければと思います。

参考:急性膵炎診療ガイドライン2021 第5版

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