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急性胆のう炎

どんな病気?

  • 肝臓で生成された胆汁(たんじゅう)は胆管を通って十二指腸に流れます
  • 胆管の脇にひょうたんのような形でぶら下がっている臓器が胆のうです
  • 急性胆のう炎は①胆のう管(胆のうと総胆管を繋ぐ細い管)が閉塞し②胆汁がうっ滞、③それに引き続き胆のう粘膜に障害、炎症が起こることで発症します。
  • 死亡率は1%未満とされています。ただし日本と台湾の共同研究において、急性胆のう炎全体のうち「重症胆のう炎」の割合が約17%、その重症胆のう炎に限定すると死亡率が約5%にも上っていました。

原因は?

  • 胆のう結石(胆石)
  • 血流障害
  • その他

一番多い原因は胆石(による閉塞)です。原因の85~95%が胆石と言われています。胆石自体の原因は胆石症のページにて解説しております。
稀な病態として胆のうがねじれて(胆のう捻転)、血流障害を起こし胆のう炎に至ることがあります。
その他にはがん胆のうがん膵がん胆管がん)による閉塞、薬剤寄生虫などが原因になる、なんてこともあります。

症状は?

 

発熱と腹痛が典型的な症状です。特にみぞおち~右きろく部(右の肋骨の下あたり)が痛みます
同時に吐き気や嘔吐を生じることもあります。
胆のう結石が「胆のう管」を通過して「総胆管」に落下するとはまり込み、「急性胆管炎」を発症することがあります。急性胆管炎では黄だん(皮膚や白目が黄色くなること)も出現しやすくなります。
急性胆嚢炎は放置をすると重篤化しやすく、上に解説したように命を落とすこともある疾患です。

どんな検査があるの?

血液検査

白血球CRPなどの炎症マーカーが上昇します。ただしこの項目は他のどんな炎症でも上昇するので疾患を特定する目的には使えません。急性胆管炎も合併するとASTALPALPγ-GTPなどの肝胆道系酵素、黄だんの数値(ビリルビン)などが上昇します。
つまり純粋な急性胆のう炎は血液検査のみでは診断することが出来ないのです。

腹部超音波検査(エコー)

エコー検査は最も簡便で、放射線検査のようにお身体への影響を心配する必要もなく、外来でサッと行うことのできる非常に有用な検査です。特に急性胆のう炎には必須と言えます。
エコーでは急性胆のう炎の特徴である「胆のうの膨張(医学的には腫大と言います)」、「胆のう壁の肥厚」、「胆のう結石」を簡単に確認することが出来ます
胆管も拡張している場合には急性胆管炎の合併を疑うことも出来ます。
一方で弱点は、高度の肥満患者さんや腸のガスが多い方、食後などでは超音波ビームが届きにくく内臓を描出しにくくなる点です。

CT検査

エコー検査よりも、より分かりやすい(診断に適した客観的な)画像として膨張した胆のう、胆石やがんなど閉塞の原因、さらには肝臓や膵臓(すいぞう)など胆道以外の腹部臓器を同時に調べることが可能です。情報量が多く非常に有用な検査です。
急性胆管炎を併発することもあり、CT画像から胆管に対しても緊急処置が必要か判断することもしばしば経験します。
CTの弱点はどうしても一定量の放射線被ばくがあること、エコーよりも胆石を映し出す能力が低い事などが挙げられます。

MRI検査

MRIの優れている点は胆道だけ切り取って立体的に映し出すことが出来る事です。CTですと上で述べたように周囲臓器も同時に確認しやすいという特徴がありますが、MRIではあえて肝内胆管~総胆管、その脇道に繋がっている胆のうのみを映し出すことで胆道全体の姿を確認し状態を確認し易くしています。特に胆石以外が閉塞の原因となっている場合に、他の検査が苦手とするところでMRIの真髄が発揮されます。
胆のう結石はほとんどの場合、胆のうの出口(胆のう管の入り口)に詰まりますので閉塞部位を確定しやすいのですが、例えば胆管がんだと、腹部エコーやCTでは原因部分をはっきりと映し出すことが出来ないことも多く経験します。
そういった場合に閉塞位置と範囲を客観的な画像として正確に描出出来るのがMRIであり、これは治療方針にも大きく関わってくるのです。
胆のう結石を映し出す能力も高く、CTには映ってこないものもMRIではそのほとんどが映ってきます。磁気のみを利用するため被ばくがないことも利点です。
欠点は狭い空間に30分ほど横になりその間じっとしている必要があることから、閉所恐怖症の方や認知症などの方は難しい点です。

治療は?

  • 抗菌薬(抗生物質)
  • 腹腔鏡下胆のう摘出術(外科手術)
  • 経皮経肝胆のうドレナージ
  • (内視鏡的胆のうドレナージ)

初期治療として原則的に抗菌薬(抗生物質)が必要となります。
その上で、根治のために早期の腹腔鏡下胆のう摘出術が推奨されています。急性胆嚢炎は非常に再発しやすいため、抗菌薬治療のみで治癒したとしても再発予防のため手術を行います。

ご年齢や合併症など、理由があって早期手術を受けられない場合には経皮経肝胆のうドレナージを行います。「経皮」とは皮膚の上からという事、「経肝」とは肝臓を貫くという事、「ドレナージ」とは排液する事です。つまり、エコーを使用して皮膚の上から肝臓を貫いてその向こうにある胆のうにチューブを通し、うっ滞した胆汁と膿を体外に排出する処置です。
胆のう炎が治癒したら、皮膚から飛び出ているこのチューブは抜去することになりますが原因となっている胆のう結石は残ったままですのでやはり再発しやすいと言えます。改めて手術を検討したり、内視鏡治療が行われる場合があります。

内視鏡治療では消化管を通して胆のうにドレナージ用のチューブを留置します。ただしこの処置は技術的な難易度が非常に高いことから実施できる病院は限られること、チューブ自体が細いためいずれ閉塞してしまうリスクがあることなどから積極的に推奨されることはありません。

以上のことから、やはり原則は手術で胆のうを摘出することであり、その他の治療法を選択せざるを得ない場合にはどうしても再発リスクを抱えつつ生活することになります。

参考:急性胆管炎・急性胆嚢炎診療ガイドライン2018(第3版)

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